今年の世界大会、おそらく人類初の「ノーミス」で「優勝」を達成した岩倉選手。
フリースタイルが主流となった世界大会が始まって20年くらいでしょうか。これまでに全部門合わせて100人近くの世界チャンピオンが生まれていますが(推測です)、完全にミスがない演技で優勝したのは1人だけ。これって相当スゴいことだと思うんです。
ノーミスくらい普通でしょという方も、ノーミスなんて普通は無理という方も、一度ここで「実際にノーミスが出る確率」を導き出してみませんか。
※あらかじめノーミスの定義を「トリック」に限定します。つまづいたとか手袋が破れたとかを含むと数が膨大になり計測が厄介です。
数学に明るい人にとっては当然すぎることを書いてるだけなのでご了承ください。あとここから出てくる計算式が間違ってたらご一報ください。
まず各部門の「トリック工程数」を計測します。厳密にいえば、そのフリースタイルの間にこなされたトリックエレメントの数です。その部門に該当しないエレメントも計測しています。
今年度の世界大会の岩倉選手の総工程数は約180個でした。
以下、「個」という単位は全てトリック工程数のことを指します。
工程数の計測は数取り器で行いました。エレメントにも個人によって定義が分かれるかと思いますが、ひとまずトリックを区切ることのできる最小単位ということで計測しています。つまり、岩倉選手(4A)のフリースタイルは、フォワードパスマウントも、そこからのワインドも、ソロハムのときストリングから離れる瞬間も、それぞれ1個ずつとして計測しています。
そうしたら、すべての工程の平均成功率から「最後までノーミスで乗り切ることができる確率」を求めます。
【成功率^トリック工程数*100=】の式で、そのパーセンテージが導き出されます。
この計算式、実はこのノーミスについての話題を提供してくれたヨシナガケイスケ選手が提供してくれました。「相当えげつない数字になりますよ」とのことで、実際にやってみたら、確かにえげつないことになりました。
今回は岩倉選手のトリック成功率を99%として計算しています。
0.99^180*100=約16.3807%
意外と高いと思った方も居られるかもしれません。
しかし、これはあくまで成功率99%と仮定した場合です。
成功率が98%・95%だと、こうなります。
0.98^180*100=約2.6344%
0.95^180*100=約0.0098%
さて、あなたのフリースタイルの全トリックの平均成功率は、何パーセントですか?
このように、工程数が非常に多くなりがちなヨーヨーのフリースタイル競技は、とても「ノーミス」に縁遠いものです。しかし、だからこそミスのない演技を捨てるのではなく、それを目指したいものですね。
ちなみに、他部門の工程数と成功率99%での計算結果は以下のとおりです。
それぞれ歴代の世界チャンピオンのフリースタイルから雰囲気で平均を出して計測しています。
●1A 約250個
0.99^250*100=約8.1059%
●2A 約600個
0.99^600*100=約0.2405%
●3A 約220個
0.99^220*100=約10.9582%
●5A 約250個
0.99^250*100=約8.1059%
ツーハンドの部門は、それぞれのヨーヨーでトリックが成立するので計測が大変でした。タングラーは1回転につき1個として計測しています。5Aは迷いましたが、ダイスとヨーヨーが連動している場合は1個、分離している場合は1個ずつカウントしました(ヨーヨーが止まっていてもダイスの移し替えで1個になる計測方法)。2Aのループ系や5Aのプロペラとバタフライ系のトリックは1回転で1個としました。
スタイルによってかなり数が変わってくるかもしれませんが、あくまで参考ということで。2A部門はチャンピオンクラスだと3分の間に500~600回はループ(系トリック)をしている計算になります。恐ろしいです。
参考までに、600個で平均成功率99.9%になると、ようやくノーミス率が約55%となります。どのプレイスタイルでも、ノーミスを目指すなら99%ですら生ぬるいということですね。乾杯。